アシストという立場
サイクルロードレース(自転車レース)は、一番最初にゴールした個人が勝者となるため、個人競技と思われがちですが、実際は高度な戦略を伴ったチームプレーで競う競技です。
最も勝てる確率の高い選手をエースとして、他の選手は「アシスト」となって、エースの勝利を支えます。
華々しい活躍をするエースには誰もが注目します。コアなファンは、アシストの仕事ぶりも楽しみます。身を粉にして働くアシストは、感動も呼びます。
そんなアシストの仕事の一つに「アタック潰し」というものがあります。
アタック潰しとは、一体どのような行為を指すのでしょうか。
アタック潰しとは
そもそもアタックとは
アタックとは、急加速をして、集団から抜け出す行為を指します。(集団ではなく、ライバルである個人に対するアタックもありますが。)
集団内で走っていた選手が、急加速をして集団を置き去りにして、ゴールしてしまおうということです。
集団の中にいたままで、ゴールを迎えると、勝ち目のない選手もいます。そういった選手は、中盤などでアタックをして、抜け出しておいて逃げ切り勝利を狙おうするのです。
アタック潰しとは
ここからが本題です。
「アタック潰し」とは、アタックをした選手に突撃する!とか、前を塞いでやる!といった行為ではありません。
「アタック潰し」を簡単言えば、「アタックをした選手の後にピッタリ付いていく」行為のことです。他チームの選手がアタックをして抜け出しにかかったら、すかさず反応して、その選手の後ろに付いていきます。
アタックをした選手と、二人で抜け出す形になる訳ですが、先頭交代は拒否し、後ろに張り付くことに撤します。
この行為は何のために行われるのでしょうか??
アタック潰しをする背景
アタックした選手の後ろに張り付いていく「アタック潰し」にはどんな効果があるのでしょうか。
例えば、今日のレースで、スプリンターの『S』を勝たせたいチームがあるとします。Sはチームのアシストたちに支えられ、集団内で平和に走っています。
そして集団が丘を登っている地点で、他チームのパンチャーである『P』がアタック!!実力者のPをここで行かせてしまったら、逃げ切られてしまうかもしれません。
Sのアシストは先頭交代してくれないので、Pは後ろに張り付かれたまま漕ぎ進めます。
Pは逃げ切りを諦め、集団に戻ります。こうなればアタック潰しの成功です。
潰しに挑む選手もいる
アタック潰しの選手に張り付かれても、孤軍奮闘して逃げ切りを目指す強者もいます。
例えば、2017年のミラノ~サンレモでのペーター・サガンは、意地を見せました。
このレースでは、アタックをしたサガンに、スカイのクウィアトコウスキーと、クイックステップのアラフィリップが反応しました。
サガンは二人に先頭交代を要求しますが、二人は協力してくれません。
スカイはスプリンターのヴィヴィアーニを、クイックステップは同じくスプリンターのガビリアを集団に残していました。
「集団にいるスプリンターがエースだから、先頭交代はしないよ」というのが二人の口実です。
並の選手なら、二人も重りが付いてきたら、大人しく集団に戻るはずです。
しかし、サガンはこのアタック潰しに屈することなく、ほぼ先頭固定で逃げ続けます。
サガンの奮闘で、逃げ切りは確定したのですが、最後のスプリント勝負でクウィアトコウスキーに勝利は奪われてしまいました。
逆に、スカイやクイックステップのように、様々なタイプの選手を抱えていれば、このような戦略が採れる訳です。
順調に集団スプリントになれば、ヴィヴィアーニで勝負ができます。アタックが発生すれば、クウィアトコウスキーが反応して「エースは後ろの集団に残っているヴィヴィアーニだから先頭交代しない」という口実で先頭交代をせずに勝利を狙えるのです。
アタック潰しについて、お分かり頂けましたでしょうか?
アシストの意味合いまで理解できると、更に自転車レースが楽しくなりますよね。
【こちらも是非】
☆2パターン『ピュアスプリンター』と『登れるスプリンター』ってなに?
☆ファンなら知っておきたい!サイクルロードレースの「5勝クラブ」